2026年1月から台湾の退職金制度に関するルールが変わりました。
今後は日本人駐在員も労工退休金条例が規定する退職金制度(通称:新退職金制度)の適用対象となり、掛金拠出が必要になります。
(参考記事: https://www.hrispasona.com.tw/jp/news/274)
これは実質的な駐在コストの増額を意味するため、各社が日本本社に情報を展開して対応しています。
そして、検討を進める中で、以下のような懸念が生じてきました。
・退職金の原資は会社からの拠出金であり、将来これを受給することは賃金増額と同義では?
・退職金制度は董事には適用されず、非董事の駐在員だけ受給するのは駐在員間の不公平では?
このような懸念には以下の背景があります。
・労工退休金条例が規定する退職金制度(通称:新退職金制度)では、企業に毎月の掛金拠出義務がある。
・当該掛金は対象者毎に月給の約6%相当であり、拠出先当局に納付する。
・対象者は外国人を含む全労働者であり、60歳で受給権が発生し、当局から受給可能である。
・董事は労働者でないため本制度対象外である。
これらの状況から見るに、退職金を受給することは、確かに賃金増額と駐在員間の不公平になるようです。
しかし、台湾の退職金制度は企業福利ではなく国のルールであるため、退職金拠出そのものを拒否することはできません。
現在のところ、各社とも運用上の解決策を模索中であり、以下のような案が見られます。
1. 給付された退職金を回収する
当該退職金の原資は雇用企業の拠出金であるため、受給後の返還を求めるという考え方です。
ですが、台湾の労工退休金条例は退職金の帰属を個人としているため、受給者の意思に反した回収には懸念があります。
2. 毎月の支給賃金から一定額を減額
将来的な回収は難しいため、受給予定額を既存賃金から事前に差し引くという考え方です。
懸念点は、何らかの理由で退職金を受給できなかった場合、既に差し引かれた分を如何に処理するかです。
3. 退職金の受給を辞退してもらう
駐在員の立場(董事/非董事)による不公平を回避するため、全駐在員に退職金受給申請を辞退してもらうという考え方です。
本来給付されるはずの退職金は国に吸収されることになり、不必要な金銭的損失となります。
また、日本本社を離職後に退職金受給申請をする場合等、事実確認ができず形式的な約束となる場合があります。
4. 退職金の受給を容認
赴任国(台湾)の現地ルールに則り、退職金受給を容認する考え方です。
上述の懸念を何らかの形で中和、または容認し、法令どおりに運用することが最も合理的です。
なお、視野を他国での運用にまで広げることで、本件の解決に有益と思われるヒントをうかがうことができます。
その一例は日本の年金制度で、日本で稼働する外国人労働者が日本を離れる際、納付金の一部が返金される「脱退一時金」という制度があります。
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/sonota-kyufu/dattai-ichiji/20150406.html
将来、類似した制度が台湾で導入され、駐在員帰任時の精算が可能となる可能性があるため、今後の展開に注意が必要です。