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人事管理制度における”評価制度”の概要

2024-09-24 00:00:00

人事労務コラム

企業経営に必要な人事管理制度は、幾つかの要素に分けて考えることができます。
今回は「評価制度」の概要を共有します。

 

(1)評価に必要な要素
A.目標設定
評価制度は合理的にパフォーマンスを判定し、「昇給」「賞与」「昇格」に反映するため用いられます。
そのため、結果ばかりが注目され、期初の目標設定があまり重要視されていない場合があります。
合理的な評価結果を算出するためには、測定可能な目標設定が不可欠です。
少なくとも、何を、いつまでに、どれくらい達成するのか、主観を排して事実を評価できるよう、明確な設定が必要です。
B.評価要素
広く知られている要素として、数値目標と能力目標があります。
数値目標はKPI(Key Performance Indicator)等が該当し、業績や生産効率等、数値による定量評価が行なわれます。
一方、能力目標は、職能(competency)に基づく評価が主になります。
数値目標を評価の主軸としている企業が多いかと思われますが、実際の職場では、努力が報われないこともあります。
極端な結果主義が先行しないようご注意ください。
C.評価割合
結果を出すべき立場の社員には、数値目標の割合が高く設定されます。
一方、管理部門や、非管理職の社員に対しては別角度から評価が必要です。
状況により、業務の安定履行を評価するため、勤務態度や時間管理等を評価要素とすることもあります。
D.期中面談
意外と見落とされがちですが、評価制度の目的は結果採点ではありません。
本来あるべき姿は"目標を達成させるためのツール"であり、長期的な視点では"社員の成長を促すツール"でもあります。
そのためには、評価結果が出る前に、期中面談を行なうことが重要です。
目標達成に向けて困難がある場合はサポートを提供し、時には、常に変動するマーケットに応じて期初の目標を修正する場合もあります。

 

(2)評価の結果
A.相対評価
いずれの企業も人事予算があり、予算内での結果反映(昇給、賞与、昇格)が原則です。
必然的に、評価結果は順位により比較され、上位社員への反映は大きくなります。
個人的に良い結果を収めても、比較的に上位でないと最大の反映は得られません。
これにより熱意を削がれる社員が生じ、経営に影響すると想定される場合は、例えば業績好調を反映した追加予算を設ける等の検討が必要です。
B.絶対評価
評価結果を順位分けして比較せず、既定の基準に当てはめて反映します。
社員の立場からは、そのまま自身の結果が反映されるため合理的に感じますが、良い結果を収めた社員が多い場合、結果反映に要するコストも増大します。
よって、本社決裁や規程変更等のため、予算の柔軟な調整が難しい場合、絶対評価の運用には一定の難度が生じる可能性があります。

 

(3)フィードバック
前述のとおり、目標達成や社員の成長が本質である以上、改善ポイントを正確に把握し、認識することが不可欠です。
面談を通じて対象社員にフィードバックすることが多く、時にはネガティブな内容となるため、伝え方には工夫が必要です。

 

(4)運用上の注意
これらの原則によって構築された評価制度の運用に際しては、制度の公開内容を吟味する必要があります。
社員は、制度の仕組みや、結果の反映について透明化を望むのが常であり、それにより生産性を高めることができるのも事実です。
一方、評価結果は昇給、賞与、昇格等、人事コストに反映されるものであり、金銭支出に関する経営上の事項として、企業側が調整権を有すべきとも考えられます。
論理的な制度を構築し、その運用を含めた全容を公開することは、時に過度な既得権を保証することにも繋がるため、社員説明会においては情報のフィルタリングに注意が必要です。