台湾における日系企業において、日常的な労務管理や労使間の認識齟齬が最も起きやすい項目の一つが年次有給休暇です。本稿では、人事担当者や管理職が正しく把握しておくべき年次有給休假の基本ルールと、実務上の注意点を整理して解説します。
1. 台湾労基法における年次有給休暇の基本付与基準
台湾の労働基準法(第38条)では、勤続期間に応じて以下のとおり年次有給休暇の付与日数が定められています。
・勤続6か月以上1年未満:3日
・勤続1年以上2年未満:7日
・勤続2年以上3年未満:10日
・勤続3年以上5年未満:毎年14日
・勤続5年以上10年未満:毎年15日
・勤続10年以上:1年ごとに1日加算(上限30日)
2. 管理方式の選択(週年制と暦年制それぞれの特徴)
特別休假の付与・管理期間の運用方式として、「週年制」と「暦年制」の2種類が認められています。
①週年制…従業員各人の入社日を基準に、勤続年数の満了ごとに日数を付与・管理する方法。
【メリット】
・法規定どおりで計算ミスや過不足が生じない。
・退職時の再計算やトラブルが発生しない。
【デメリット】
・従業員ごとに対象期間・付与期日が異なるため、日常的な管理が煩雑になる。(システム導入により解決可能)
②暦年制…毎年1月1日〜12月31日等の一定年度期間で全従業員を一括管理する方式。(入社年次は按分付与)
【メリット】
・全社の基準日・付与タイミングが揃い、年度ごとの人事管理やシステム運用が容易。
【デメリット】
・按分計算が必要。
・退職時や年末清算時に法定基準(週年制)との差額清算が必要。
3. 実務で押さえるべき4大重要運用ルール
① 年次有給休假の「取得日決定権」は全面的に従業員にある
年次有給休假を取得する期日を決定する権利は、全面的に従業員側にあります。会社都合や閑散期を理由に、会社が一方的に取得日を指定したり一斉消化を強制したりすることは違法です。企業の重大な経営上の都合により出勤を要請する場合は、一方的な命令ではなく、必ず労使間で協議を行い、従業員の合意を得る必要があります。
② 未消化日数の買い取り義務と「週年制」基準の注意事項
年度末の時点で未消化の年次有給休暇がある場合、原則として会社は未消化分を買取る義務(双方合意により1年間の繰越可)があります。法的に買い取り義務が発生するのは、あくまで法律上の基準である「週年制」で権利が確定・発生した実日数分のみです。
暦年制を採用している場合、年度途中で先行付与となっている日数は、退職時等の法定買取義務の対象外となります。従業員が「画面上の表示日数がすべて無条件で買い取られる」と誤認して労使トラブルになるのを防ぐため、「法定買取・清算の対象は週年制に基づく実日数である」旨を、就業規則への明記および入社時・清算時に丁寧に説明しておくことが不可欠です。
③ 有給取得日に「出勤停止令」が発令された場合の扱い
台風等の天然災害発生時、自治体から「停班停課(出勤・登校停止)」が発令されることがあります。法的には、事前に取得していた年次有給休暇を取消す義務までは会社に課されていません。当日の混乱を防ぐため、就業規則等で「出勤停止令発令時の事前申請済み年次有給の取扱い(取消可否)」を明確に定めておくことが推奨されます。
④ 従業員への残日数「通知義務」
雇用者は、毎月の給与明細や社内システム等を通じて、年次有給休假の付与日数、消化日数、残日数を従業員に定期的に書面やデータで通知する義務があります。
年次有給休假に関するトラブルを未然に防ぐためにも、自社の就業規則と現場の運用フローを定期的に見直しておきましょう。