「1年更新契約社員」は合法なのか?
人材の流動化が進む中、「毎年契約を更新し、評価結果によって雇用継続を判断したい」と考える企業も少なくありません。例えば、企業が新入社員に対して「1年ごとの有期契約」を締結し、毎年の評価によって契約更新の可否を決定するケースがあります。一見すると合理的な人事制度のようにも見えますが、台湾の労働法では必ずしも認められるわけではありません。
今回は、台湾における「有期契約」と「無期契約」の違い、および企業が注意すべき法的リスクについて解説します。
有期契約を締結できるのは限定的な場合のみ
台湾の労働基準法第9条では、労働契約を「有期契約(定期契約)」と「無期契約(不定期契約)」に区分しています。
原則として、継続的に存在する業務については無期契約を締結しなければなりません。
一方、以下のような業務については例外的に有期契約が認められています。
1.臨時性業務
予測できない一時的な業務であり、期間が6か月以内のもの。
(例:地震や災害後の復旧作業、新商品のアンケート調査員、天災処理の清掃員)
2.短期性業務
6か月以内で終了することが明確な業務。
(例:産休取得者の代替要員、夏休みの短期アルバイト、百貨店セール時の販売員)
3.季節性業務
原材料の供給や販売状況等、季節要因によって発生する業務で、期間が9か月以内のもの。
(例:農作物の収穫人員)
4.特定性業務
特定のプロジェクトや事業に関連し、一定期間で終了する業務。
(例:建設工程、発電所のプロジェクト職)
なお、契約期間が1年を超える場合には主管機関への届出が必要となります。
「1年更新契約」にしても無期契約と判断される場合がある
企業によっては、通常業務を担当する従業員にも毎年有期契約を締結しているケースがあります。
しかし、労働基準法では契約書の名称ではなく、実際の業務内容や雇用の実態によって合法性が判断されます。
以下のような場合には、無期契約とみなされます。
■ケース1
契約期間満了後も従業員が引き続き勤務し、会社が特に異議を示さなかった場合。
■ケース2
会社が新たな有期契約を締結したとしても、前後の契約期間の合計が90日を超え、かつ契約の空白期間が30日以内の場合。
有期契約を利用する目的に注意
有期契約満了による離職の場合、原則として解雇予告期間の賃金や解雇金の支払い義務は発生しません。
そのため、一部の企業では、
・解雇金の支払いを回避したい
・解雇手続きを簡略化したい
といった理由で有期契約を利用しようとするケースがあります。
しかし、本来無期契約とすべき業務に対して形式的に有期契約を締結した場合、後日労使争議が発生した際に裁判所から無期契約と認定されるリスクがあります。
その結果、
・契約終了が実質的な解雇と判断される
・解雇理由の適法性が問われる
・退職金や損害賠償の支払いが発生する
といった問題につながる可能性があります。
契約の名称ではなく「業務の継続性」が重要
台湾の裁判所は一貫して「継続的業務が原則であり、有期契約は例外である」という立場を取っています。
したがって、企業が継続的に事業を行う予定であり、その職務も恒常的に必要なものである場合には、原則として無期契約を締結する必要があります。
たとえ契約書に「1年間の定期契約」と記載していたとしても、それだけで有効になるわけではありません。
企業への実務上のアドバイス
企業が有期契約を活用する際には、まず対象業務が法令上の「非継続的業務」に該当するかを慎重に確認することが重要です。
また、評価制度の運用や人材マネジメントを目的とする場合には、契約更新を前提とした有期契約ではなく、無期契約のもとで評価制度や昇給制度を整備する方が法的リスクを抑えられるケースも少なくありません。
人手不足が続く中、企業にとって柔軟な人事制度の構築は重要な課題ですが、労働法上のルールを正しく理解した上で運用することが、将来的な労使トラブルの防止につながります。