~従業員の権利・義務と企業が知っておくべきコンプライアンス~
労働関係法令において、「職工福利委員会(以下、福利委員会)」は労使関係を支える重要な制度の一つです。日本には同様の組織が存在しないため、台湾へ進出した日系企業では、その制度を十分に理解していないケースも少なくありません。
福利委員会は、従業員の福利厚生を充実させることを目的とした法定機関であり、設立義務や福利金の徴収・運用方法についても法律で定められています。企業が適切に運営することは、労務コンプライアンスの観点からも重要です。
福利委員会の設立が義務付けられる企業
労働部の通達により、常時50名以上の従業員を雇用する金融機関、会社、商店等は、福利委員会を設置しなければなりません。
押さえておきたい3つのポイント
1.従業員50名以上で設立義務
常時雇用する従業員数が50名以上となった企業は、福利委員会を設置する法的義務があります。
一方、50名未満の企業に設立義務はありませんが、従業員満足度や帰属意識の向上を目的として任意で設置することも可能です。
2.従業員数が50名未満になった場合
一度福利委員会を設立した後、事業縮小等により従業員数が50名未満となっても、福利委員会を解散することはできません。引き続き運営を継続する必要があります。
3.支店も設立が必要?
支店の資本金が本社と一体である場合は、本社と共通の福利委員会を設置できます。
一方、支店が独立した資本金を有し、かつ常時50名以上の従業員を雇用している場合には、独自に福利委員会を設置することも可能です。
従業員は福利委員会への加入を拒否できる?
→結論として、加入を拒否することはできません。
福利委員会制度は、従業員全体による相互扶助を目的とした制度です。
福利厚生を受ける権利がある一方で、福利金を負担する義務も全従業員に課されています。
雇用主が労働者の経済的負担を軽減するため、労使間で福利金を給与から控除せず、雇用主がその分を負担することで合意した場合でも、その福利金は労働者の給与として処理し、会計上計上・申告する必要があります。
アルバイトや有期契約社員、外国人労働者も対象?
→はい。
正社員だけでなく、アルバイト、有期契約社員、外国人労働者も福利委員会の福利厚生を利用できるため、給与から福利金が控除されます。
退職時に福利金は返還される?
→返還されません。
毎月給与から控除される福利金(給与の0.5%)は、共同基金として運営されるため、退職時に返還を請求することはできません。
育児休業等休職中はどうなる?
→育児休業等で給与の支給がない期間は、原則として福利金の控除は行われず、福利委員会の福利厚生も利用できません。
ただし、福利委員会の規程で認められている場合には、休職中も本人が任意で福利金を納付することで、福利厚生を継続して利用できる場合があります。
福利金の財源と利用できる範囲
福利委員会は企業とは独立した組織であり、福利金の財源や支出用途は法律で厳格に定められています。企業会計と混同して管理することはできません。
福利金の4つの財源
① 設立・増資時
払込資本金の1~5%を拠出します。
② 毎月の営業収入
営業収入(消費税を除く)の0.05~0.15%を拠出します。
③ 従業員給与からの控除
毎月の給与から0.5%を控除します。
④ 廃材等の売却収入
製造過程等で発生した廃材等の売却代金の20~40%を福利金へ充当します。
福利金を使用できるもの・できないもの
「従業員のためであれば何にでも使える」というわけではありません。
使用できる例
福利金は、例えば次のような福利厚生に利用できます。
・慶弔見舞金
・出産・傷病見舞金
・災害時の救済金
・資格取得・研修補助
・子女教育補助
・クラブ活動・レクリエーション
・国内外旅行
・年末年始等の慰労金
・団体保険
・保育・家族支援制度 等
使用できない例
一方、次のような費用に福利金を充てることはできません。
・労災保険・健康保険等、法律上会社負担とされる費用
・定期健康診断費用
・制服・安全靴・保護具等業務上必要な備品
・忘年会・尾牙・春酒等、本来会社負担と考えられる行事
・外部への寄付
・福利委員のみが参加する海外視察等、一部の人だけが利益を受ける支出
企業へのコンプライアンスアドバイス
1.従業員数が50名に近づいたら早めに準備する
福利委員会の設立には、
・設立申請
・規約作成
・年間事業計画
・予算作成
・労働者代表委員の選挙 等、多くの手続きが必要です。
従業員数が45名程度になった段階から準備を始めることをおすすめします。
2.委員の構成・会議運営を適切に行う
福利委員会は7~21名の委員で構成され、会社代表と従業員代表が参加します。
労働組合がない企業では、従業員代表は全従業員による選挙で選出しなければなりません。
また、委員会は少なくとも3か月に1回開催し、議事録を保存する必要があります。
3.福利金は専用口座・独立会計で管理する
福利金は福利委員会名義の専用口座で管理し、会社の資金とは完全に区分する必要があります。
毎年の予算・決算は委員会で審議した上で主管機関へ届け出なければならず、福利金を会社の営業資金として使用することは認められていません。
まとめ
福利委員会制度は、企業にとって法令遵守のためだけでなく、従業員満足度の向上や職場への帰属意識を高める重要な制度です。
制度を正しく理解し、福利金を透明性のある方法で適切に運営することで、労働基準監督等のリスクを回避するとともに、企業と従業員双方にとってより良い職場環境の実現につながるでしょう。