春節明けの時期は、年間を通じて最も転職活動が活発になる時期です。そのため、内定を出した後に、より優秀な求職者が現れる等、予期せぬ状況が生じることがあります。しかし、安易に内定を取り消すことは企業に法的リスクを招く可能性があるため、慎重な対応が必要です。
本記事では、台湾で内定を取り消す際の法的背景や潜在的なリスクを整理し、トラブルを未然に防ぐためのポイントを解説します。
1. 労働契約の成立
労働基準法には、労働契約が成立する条件について特別な規定はありません。そのため、民法の規定が適用されます。民法第153条第1項によれば、当事者の意思が一致すれば、明示的・黙示的にかかわらず契約は成立します。つまり、面談時に口頭で「採用します」と伝え、企業と求職者が労働条件(給与、業務内容、入社日、勤務時間等)について合意すれば、書面がなくても契約は成立する可能性があります。
実務上、多くの企業は採用について面談での口頭伝達を避け、後日、採用通知書(オファーレター)で正式に意思表示を行うことが一般的です。
2. 内定の取り消しと法的リスク
・求職者が採用通知書に署名していない場合
採用通知書を発行しても、求職者が署名をしていない場合は、労働契約が明確に成立しているとは言えません。ただし、上述のとおり面談時に労働条件について口頭合意がある場合は労働契約成立の可能性があるため、リスクが全くないわけではありません。
・求職者が採用通知書に署名した場合
採用通知書に署名を行うと、労働契約は明確に成立します。契約成立後に企業が一方的に出勤を拒否したり、内定を取り消したりする行為は、実質的に解雇と同等と見なされ、法的リスクが非常に高くなります。
3. トラブルを避けるための企業の対策
・面談段階で「採用」と断定しない
口頭での合意も労働契約成立のリスクがあるため、社内で正式決定する前に「採用します」と伝えることは避けましょう。内定通知前に関係部署と連携し、承認を得ることも重要です。
・採用通知書に回答期限を明記
回答期限を明記しない場合、企業は求職者からの返答を長期間待つことになり、企業側に不必要なリスクが生じる可能性があります。回答期限を明記することで、契約成立のタイミングを明確にできます。
・入社前のコミュニケーションで不安を解消
入社前の情報不足や不安から辞退が発生することがあります。入社手続きや業務に関する質問等については丁寧に説明し、求職者の疑問や不安を事前に解消することが、採用辞退やトラブル防止につながります。
状況に応じて、内定取り消しに伴う損害を補償するため、保証金を支払う場合があります。企業が内定を取り消す際は、法的リスクや影響を十分に理解したうえで、採用担当者間で共通認識を持つことが重要です。こうした体制を整えることで、トラブルを未然に防ぐことができます。