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企業が注意すべき「労働事件法」のポイント

2025-12-08 00:00:00

人事労務コラム

労働事件法とは2020年1月1日に施行された、労働事件処理の手続きについて定めた法律です。従来、実体法である労働基準法による労働者の権利保障は存在したものの、手続法の補足規定が不十分であったため、労働者が本来得られるべき権利を獲得できないケースが多く見られました。このような背景のもと、経済的に弱い立場にある労働者を保護し、労働争議を迅速に解決するとともに、労働事件の処理に専門性を持たせ、実質的な公平性を実現するため、手続法としての労働事件法が制定されました。

企業が注意すべき本法の主な内容を以下に共有します。

・紛争解決の迅速化

労働調解は原則として3回以内に終結し、申請日から30日以内に第一回調解期日が指定され、3か月以内に終結することが定められています。調解不成立の場合、裁判所は原則1回の期日で弁論を終結し、6か月以内に審理を完了します。企業は従来よりも短期間で証拠資料を準備する必要があり、初動対応が極めて重要となります。

・調停・裁判期間中の解雇制限

労働事件法では、労働者保護の観点から、調停や裁判の手続きが終了するまで、企業は当該従業員を解雇することができないとされています。つまり、紛争が長期化した場合でも雇用関係を維持する必要があり、その間の給与支払義務が継続します。

このように、本法は労働者保護の観点が極めて強い法律となります。労使争議を避けるため、また、万が一労使争議になった場合に備え、企業は平時から以下の点に注意する必要があります。

・労働契約書、就業規則の適切な整備と保管

・出退勤記録、残業申請書等の確実な記録と保存

・業務指示、人事評価、面談記録等の文書化

・労働基準法等の関連法令の定期的な確認

・従業員とのコミュニケーション強化と信頼関係構築

・紛争発生時の初動対応

また、労使争議の兆候が見られた場合は、直ちに以下の対応を取ることをおすすめします。

・関連証拠の速やかな収集と整理

・専門家(弁護士、就業服務技術士等)への早期相談

・社内関係者への事実確認と情報の一元管理

・早期和解の可能性を検討


台湾における日系企業の日本人管理者にとっては、時に現地社員とのコミュニケーションが難しかったり、現地の労務管理に関する情報収集が困難であったりすることもあるかと存じますが、本ウェブサイトや外部コンサルタント等をご活用いただき、労使争議を未然に防ぐための管理が必要といえます。