台湾には、企業が労働基準法や職業安全衛生法等の労働関連法令を順守しているかを確認し、違反があれば改善を要求し、場合によっては罰金が科されるほか、労働部のウェブサイト上で企業名、違反項目、罰金が公開される可能性がある労働検査の他に、コンプライアンス視察(中文:法遵訪視)というものがあります。
社員30人以下の企業では、雇用者が労働関連法令に明るくなかったり、労務管理を専門に行う社員がいなかったりするケースが多いため、労働局が企業の労務管理状況を確認し、指導や改善提案を行う場合があります。これをコンプライアンス視察といい、政府からの公文書によって視察の日時、場所、必要資料が事前に通知されます。事前準備が求められる書類には以下のようなものがあります。
・労働者名簿
・給与台帳
・雇用契約書、就業規則
・労使会議代表者名簿及び議事録
・社会保険加入資料
・年次有給休暇資料
・セクハラ防止措置、通報、懲戒規程 等
視察当日は、事前に公文書と共に送られるセルフチェックリストの内容及び事前に準備した資料に基づき、主に社会保険加入状況、給与計算方法、勤怠記録、休暇管理、労働時間管理を確認します。
万が一視察で企業の違法な対応を指摘されても、コンプライアンス視察の目的は指導及び改善であるため、直ちにペナルティが科されたケースはこれまで耳にしたことがありません。但し、違法な対応についての改善が見られない場合には、後に労働検査が入る可能性が高いです。
コンプライアンス視察の通知を受け取った場合、労務管理を見直す良い機会と捉え、視察結果に応じて必要な対応をすることで、労働検査での指摘リスクを減らしたり、労使争議を防ぐことができます。