台湾の労働部が発表した統計によると、過去5年間における台湾全国の労使間の争議件数は、年間およそ25,000件から27,000件の間で推移しています。その中で最も多い争議の内容は「賃金の未払い(残業代を含む)」であり、次いで「解雇金の未払い」、「職業災害補償の未払い」、「雇用契約に関する争議」が上位を占めています。
労働部は、企業が法令遵守の状況を常に確認し、従業員の相談窓口を設けて社内解決の仕組みを整えることが、安定かつ調和の取れた労使関係を築き、争議発生を抑制する有効な手段であるとしています。
2023年の争議件数は計25,731件に上り、争議内容ごとの件数と全体に占める割合は以下のとおりです。
・賃金未払い関連…10,815件(42%)
・解雇金の未払い関連…6,238件(24%)
・職業災害補償関連…1,814件(7%)
・契約関連…1,808件(7%)
この4種類の争議だけで全体の約8割を構成しています。まだ統計は出ていませんが2024年においても同様の傾向があります。
特に賃金未払いの中には、残業代未払いのケースも多数含まれており、給与や残業代の計算方法が法律に違反している企業が見受けられます。また、契約に関する争議では、労働者の雇用契約が一方的に終了された場合に、「雇用関係の回復」を求めるケースもあります。これらの背景には、企業が契約終了時に解雇以外の手段の検討を放棄したり、契約内容の履行を怠ったりする事例があると労働部は分析しています。
企業の法令理解によりトラブル回避
労働部は、企業が法律や裁判所の判例に対する理解を深めることが、労使間のトラブルを未然に防ぐ鍵であると強調しています。特に人事担当者や管理職に対しては、内部での実務手続きや規定の合法性を定期的に見直し、必要に応じて調整を行うことを求めています。
弊社でも、お客様から頻繁にお問合せいただく内容で、雇用契約や会社ルールの変更手続きに関するご相談があります。例えば会社の既存の休暇日数変更やその他の福利厚生項目を削減する場合は、労使会議での同意や従業員個人の同意を得たうえで変更を実施する必要があります。このような手続きを経ずに社員にとって不利益となる変更を行った場合、労使争議につながる恐れがあるため、慎重に対応すべきです。
労働者への支援を拡充
労働部および地方の労働主管機関では、労働法令に関する啓発活動を積極的に行っており、ウェブサイト上には様々な教育資料や講座が用意されています。また、労使争議の調停を申請する前には、無料の法律相談サービスを提供しており、調停時にも無料で弁護士が同席し、公正な調停人による支援を受けることが可能です。さらに、訴訟に進む場合には、一部の地方自治体と連携して、弁護士費用や裁判費用の補助も行っています。このような支援策により、労働者は労使問題に対して声を上げやすい環境になっているため、企業は法的義務の履行を一層徹底し、内部体制の整備を進める必要があります。
調和のとれた労使関係を基盤に安心できる職場づくり
労働部は、「調和のとれた労使関係こそが企業の持続可能な経営と利益創出の基盤である」と述べ、企業に対し、過去の争議の傾向を重視し、法令遵守体制の強化や、労働者との定期的な対話・社内通報制度の整備に取り組むよう呼びかけています。労働者が安心して働ける職場環境を作ることが、無用な争いを避け、企業の安定成長につながるとしています。
弊社でも、企業における法令順守体制の整備を支援する相談サービスのご提供や労働基準法関連のセミナーを実施していますので、ご不明な点やご懸念がございましたら、お気軽にご相談ください。