ここ最近、すでに台湾に進出している多くの日系企業が、オフィスの移転やその計画を進めているという話を耳にする機会が増えています。台湾でのオフィス移転は、単なる物理的な引越しにとどまらず、従業員の働きやすさや顧客・取引先との関係、さらには企業イメージにも影響する重要なプロジェクトです。以下では、特に注意すべき項目について整理します。
台湾におけるオフィス移転において、最も重要な要素の一つが「立地選び」です。特に台湾のビジネス文化では、通勤のしやすさや食事環境の充実度が、社員の働きやすさや企業への定着意欲に大きく関わるとされており、優秀な人材の獲得や維持にも直結する課題です。
・交通の利便性:MRTやバス停からの距離、駐車場の有無を確認
交通の利便性は最も重視されるポイントの一つです。MRTやバス停からの距離、周辺の道路の渋滞状況、さらには社員や来客用の駐車場の有無まで、総合的に判断する必要があります。通勤にストレスを感じるような場所では、社員のモチベーション低下や離職リスクの増加を招く恐れもあります。
・周辺施設:コンビニ・レストラン等昼食環境の充実度
周辺の生活環境も社員の満足度を左右します。台湾では昼食を外で取る人も多く、オフィス周辺にレストラン、フードコート、コンビニ、カフェ等の飲食施設が充実しているかどうかは、日常業務の快適性に直結します。飲食店が少ないエリアでは、昼休みの過ごし方に不満が生じ、長期的な職場環境への評価にも影響を及ぼしかねません。また、銀行、郵便局、ドラッグストア等の生活インフラの整備状況も考慮しておくとよいでしょう。
・防災インフラ:地震・火災対応の安全性、避難経路の整備状況
台湾は地震や台風等の自然災害が発生しやすい地域であるため、建物の耐震性能や非常口の配置、消防設備、避難経路の表示等、安全性に関する基本条件を確認することが不可欠です。ビルの管理体制や緊急対応のマニュアルが整っているかどうかも、オフィス選定時のチェックポイントとして外せません。
・取引先、関係企業との距離:商談や物流の利便性を考慮
取引先や協力会社との地理的距離も業務効率を左右する要素となります。特に営業や物流を伴う業種では、移転先が主要取引先から離れすぎていると、移動時間やコストが増加し、業務の非効率化を招く可能性があります。日常的な会議や商談、配送の利便性を考慮し、関係各所とのアクセスが良好な立地を選定することが、業務の円滑な遂行にもつながります。加えて、移転先のビル管理組合や近隣オフィスとの良好な関係づくりもスムーズな移転と業務開始に貢献します。
オフィス移転時にはコストや面積だけでなく、「人」「仕事」「周囲の環境」という多面的な視点で移転先を選定することが、長期的に見て企業成長に大きく寄与します。