企業経営に必要な人事管理制度は、幾つかの要素に分けて考えることができます。
今回は「評価結果反映(昇給)」の概要を共有します。
毎年、年末が近づくと昇給に関するお問い合わせが増加します。
内容は「他社の昇給率水準について動向を知りたい」というものが大半です。
近年は、半導体業界をはじめ全体的な賃上げ傾向が強いため、ベースアップの参考値として全体の動向を参照するのは合理的かもしれません。
しかし、人事評価に基づく昇給検討に際しては、勤務状況や成績の優劣により、社員毎の昇給率を算出すべきです。
仮に、昇給率を全社員一律(または近似値)とした場合、努力が認められず、怠慢が放置されることになり、結果として組織の生産性は低下してしまいます。
したがって、人事評価の結果に基づき昇給を行なうことが必要です。
では、同一等級で、同様の評価を獲得した以下の2人に対しては、どのような昇給が合理的でしょうか。
(Aさん)
・在籍等級 主任クラス(賃金レンジ40,000元/月~60,000元/月)
・評価結果 A(最上級の評価結果)
・現状賃金 59,000元/月
(Bさん)
・在籍等級 主任クラス(賃金レンジ40,000元/月~60,000元/月)
・評価結果 A(最上級の評価結果)
・現状賃金 41,000元/月
等級制度と賃金制度により、職責の軽重に基づいた各等級の賃金レンジが定められた以上、支給賃金は設定上限値を超えてはいけません。
在籍年数を報酬対象要素と見なし賃金が青天井となる賃金制度を除き、各等級の労働者が担う職責の重さは原則として有限であるため、賃金額も有限となります。
よって、前述(Aさん)は最上級の評価結果であるにも関わらず、昇給余白は設定上限値までの1,000元となり、以後の昇給は停止します。
一方、前述(Bさん)は相対的に賃金額が低いことから、通常よりも高い昇給率を適用し、モチベーションを高めることも合理的です。
以上、評価結果と現状賃金を併せて昇給を考慮すべき旨、サンプルを用いて紹介しました。
実際の運用では、職責が増加した社員は昇格に伴い賃金レンジの上限値が上昇するため、極端な昇給率低下はあまり発生しないのが自然な姿です。
もし賃金の青天井化や昇給対応への課題がある場合は、人事予算の効率化と生産性促進のために、直ちに対策を講じる必要があります。